私の恩師とその師匠について少し語らせてください。

昨年末、東京時代の恩師が亡くなったとの急な知らせがありました。
そして、年が明けた5日、
その方の師匠も同じく昨年末に亡くなったというニュースが流れたのでした。
驚きました。


私が建築の道を志してから、様々なことを教えていただいた恩師。
その恩師の言葉は、その方の師匠の言葉でもありました。
私が恩師から沢山のことを学んだように、その恩師も師匠から多くのことを学んだと生前語っていました。
設計とは、監理とは、現場とは、そしてデザインするとは何か、建築するとは何か、と。
あるときは朝から晩そして深夜まで、数キロ先の新宿の高層ビル群を見ながら、
四谷のビルの10階にある小さなアトリエで、建築について語り合いました。
それからまだ十数年だというのに…。今でも信じられません。


よく、動物は生まれて初めて見た相手を親だと思うそうですが、
設計事務所の世界でも最初に就職した事務所の建築家の影響は大きいと思うのです。
恩師は師匠から受け、私は恩師から受けた。
薫陶を受け末席にいた一人として、今でもそのように感じます。

そのスクールを表すものとされる格言があります。
「和して同ぜず」と。

私が受けた影響は、この混沌とした時代の中にあって、大きな心の拠りどころとなって
様々な場面で反復されます。
私にとって、お金では決して買うことのできない心の宝物のようなものなのです。
事務所では「所長」とは言わず、苗字の後に「さん」を付けて呼んでいました。

栗原さん、そして菊竹さん。

謹んでお二方のご冥福をお祈り申し上げます。